■作品内容
1805年春、16歳のインディアンの少女・サカジャ
ウェアは、生まれたばかりの赤ん坊を背負い、
史上名高いルイス=クラーク探検隊の一員として、
壮大な旅へと出発します。
それは、ミズーリ川の源流を遡り、ロッキー山脈
を越え、太平洋へと向かう21ヶ月にも及ぶ苦難の
旅でした。この探険で通訳兼ガイドとし
て大きな貢献したのがサカジャウェアでした。
アメリカ人なら誰でも知っている伝説の少女の姿
を通して、アメリカ人の心の故郷をさぐる。
【著者紹介】
ケネス・トーマスマ
1930年ミシガン州生まれ。ミシガン大学大学院修士課程修了。
小・中学校の教師・校長を経て作家に。
邦訳書に「モホ・ワット」「ナヤ・ヌキ」『パスキ・ナナ』などがある。
加原奈穂子(かはら・なほこ)
1972年、岡山市生まれ。早稲田大学文学部博士課程修了。現在、早稲田
大学助手。
西江雅之(にしえ・まさゆき)
1937年、東京生まれ。早稲田大学大学院博士課程修了後、フルブライト奨
学生としてカルフォルニア大学大学院で学ぶ。文化人類学者、言語学者。
主な著書は、『花のある遠景』『ヒトかサルかと問われても』など。
【書評から】
アメリカで今年から出回っている新1ドル硬貨には、一人のインディアンの
少女が描かれている。少女の名前はサカジャウェア。200年近く前に実在して
いた人物だ。彼女は伝説の中で悲劇の王女ポカホンタスと同じように、アメリカ
では最も有名なインディアンの少女。
(中略)
当時16歳だった彼女は、生後55日の赤ん坊を背負い、往復1万キロを探検隊と
共に踏破し、夫以上の働きを示して隊を支えた。本書は日記をもとに、彼女が
歩んだ道を辿ったもの。
探検隊とインディアンの出会いや豊かで厳しい自然などを通して、アメリカの
人びとの心の故郷がいきいきと描かれている。
(「週刊東洋経済」2000.3.18)
◆
帯に書かれた「2000年発行、新1ドルコインに描かれたインディアンの少女サカ
ジャウェアを知っていますか?」という質問に「イエス」と答えられる日本人は
ほとんどいないに相違あるまい。
この少女は、アメリカ開拓時代に政府派遣の「ルイス・クラーク探検隊」に加わ
った一少女、いや、若き女性のことである。
彼女の特技は、まず第一に、インディアンと生活をともにしていたときに習い覚
えた、食用根菜の見分け方である。探検隊が食糧難にさらされた時、彼女のその
能力は最大限に発揮された。
そして、第二は、所属した部族の言葉、ショショニ語をあやつることが出来た点
であり、彼女なしにはこの探険は不成功に終わったと見る向きもある。
当時、インディアンの地位は低く、サカジャウェアとて、幼いときに白人に売ら
れ、その主人について、幼子を抱えながらも探険に加わらざるを得ない羽目にな
った。
そうした定められた環境の中で、サカジャウェアは自己の本領を発揮して、探検
隊の陰の力となっていく。
そのことが「はさみ込み」形式によって、わかりやすく語られる。つまり探検隊
のメンバーの日誌記録が引用され、その後に、著者トーマスマの適切な解説が内
容を説明するのである。
これは、ともすれば、主旨をまるで消化できないうちに終わってしまう無味乾燥
な記録の意味内容を、活き活きと読者に伝える、という点で実に親切なものと言
えよう。(以下略)(川鍋博)
(図書新聞2000.6.17)
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