■作品内容
列強の欲望がうず巻く19世紀の東アジア
だが、明治新政府には、自前の軍隊さえなかった!
☆日本の近代を「安全保障」と「技術・教育」の観点から捉え直した画期的書。著者、渾身の書き下ろし!
《本書の目次から》(一部抜粋)
第1章 日清戦争と脚気
・外征型軍隊の建設
・初めての対外戦争と誤算
・日清戦争とその実態
第2章 世界が注視していた日露戦争
・それまでの戦争と大きく異なっていた日露戦争
・完成された連発銃・三十年式歩兵銃
・まだ間に合わなかった馬の改良
第3章 金もない、資源もない日露戦争後
・日露戦後のアノミー(無規範)社会
・世界が注目した日清両国の海戦
・海軍はなぜアメリカを主敵としたのか
第4章 第一次世界大戦と日本
・第一次世界大戦から陸軍はなにを学んだのか
・火力主義か白兵主義化の大論争
・陸軍の軍縮は砲兵の削減だった
第5軍事と技術と教育
・ああ快なるや航空兵、陸軍航空隊の夜明け
・戦車とはいえなかった戦車
・学校教育と軍隊
【著者紹介】
1951年東京生まれ。横浜国立大学大学院修士課程修了(学校教育学専攻)。
日本近代教育史、国民教育と軍隊、日露戦後の教育改革と軍隊教育、大正期の
陸軍幹部人事などを研究する。現在、生涯学習研究センター常任理事、聖ヶ丘<
教育福祉専門学校などを勤めながら、教育史の研究を続ける。
近代陸軍は教育機関であり、国民のインデックスであることを主張し、陸上自衛隊
との関係を深めてきた。
主な著書に、『静かに語れ歴史教育』(出窓社)『子供に嫌われる先生』『自衛隊
という学校 正・続』『指揮官は語る』『学校で教えない日本陸軍と自衛隊』(いずれ
も並木書房)などがある。また、公演活動のほか、メールマガジン「海を渡った自衛
隊」(毎週刊)の発行も行なっている。
【書評から】
安全保障への慧眼
副題は「安全保障と技術の近代史」と或る。
著者は、時代状況の推移(例日露戦争)を的確に把握し、
日本人として成すべく安全保障の原点を見つめ、
国家の為の軍事力(国防概念への覚醒)−技術面と軍隊思想の
構築を啓示してをる。
其の結果、導き出されし真実は、我が国の軍人が<好戦的・無謀な戦>
を行った。こうした無知な固定観念が極めて根拠の無い独りよがりの自虐
と反省させられるのである。
内容は、御一新後の近代軍隊の創設から満洲事変までを語る。
−陸軍への偏見・無知。此がいい加減な憶測によると知る。実例にて教えてくれた。
司馬遼太郎『坂の上の雲』文中、「日露戦争初期・日本人は機関銃を知らぬ」
「乃木希典は無能」「日本軍人は砲射程が解らぬ」と。然し遠藤周作も語って居たが
作家の私感が入る。つまり小説だと云う事。真面目すぎる読者ほどこの点を見落とす。
又、別な読者も語ってをったが、「赤紙」(一銭五厘の葉書)で戦地へ。
此は誤り「充員招集」と呼ばれ役場から丁重な手紙通知が行われたのである。
其の他にも誤解や日本軍への恨みから、或いは反軍思想(大正時代の軍人蔑視)蔓延が
災い、今日平和憲法を盲信する余り自衛隊を否定する政党も或る。半藤一利ら文壇
の澱に惑わされてはいけない。
察すれば、清国・露西亜の脅威、西洋列強と対峙した大和民族の真摯な祖国愛。
国家防衛の腑>の重要性に目覚めるのである。
本書は、「外征型軍隊の建設」「日清日露戦争」勝因の分析(師団編成、兵器等)
と細部説明、「第一次大戦と日本」「軍隊と技術と教育」。克明に注釈を明記し
解りやすく述べて居る。荒木肇氏の迸る雄志が触角として伝播されるのである。
無縁かと想われる<安全保障>への慧眼−知らしめてくれる。名著は口に苦く心強い。
(評・蓮坊公爾・文藝評論家)
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