■作品内容
春のカサゴ、夏のアオリイカ、秋のカワハギ、
タコ、ゴンズイ…
念願の漁業権を取得し、新たに漁船・隼丸を
造り、漁師生活まっしぐらの夫を尻目に、
妻と娘はインターネットの闇の彼方へ
房総の漁師町に押し寄せたインターネットの
荒波。「こうやつ新聞」のWeb化、花と魚
のネット販売…なんでも遊びにしてしまう
コウヤツ・ワールドの面々が繰り広げる、面白くもほろ苦いインターネット騒動。
【著者紹介】
1941年満州生まれ。東京大学文学部卒業。
TBS、テレビマンユニオンなどを経て、現在雑誌記者。
著書に「悲しい錯乱」「マンボウの刺身」「ゴンズイ三昧」「絶品、マトウダイ」
「ぼくの父は詩人だった」「銀座の女、銀座の客」などがある。
【書評から】
筆者は週刊誌編集者のかたわら、千葉房総の館山で漁師を始め、現在は漁業権も
獲得し、還暦を迎えながらも新参の漁師として当地での生活を送っています。
本書は、そんな筆者の「漁師ライフ」を、1990年代のパソコンやインターネット普及
の流れに沿って著したエッセイです。
新しモノ好きが嵩じて購入したパソコンに四苦八苦して投げ出した後、そのパソコン
を手にしたのは妻と娘。筆者の知らぬうちにあっという間に自分たちのホームページ
を立ち上げ、さらに地元産品のネットモールまで始めます。
ローテクとハイテクのはざまの悲喜こもごもが、興味深い一書となっています。
(少年写真新聞社 2003年9月8日発行 第191号付録)
◆
パソコンいかす格好例
パソコンの普及はめざましく、高齢者が孫とメール交換したり、主婦がインターネッ<
トによって子育て情報を獲得したり、ということは日常的なこととなりつつある。
この本は、インターネットが一般家庭に入り込んでくるプロセスを、社会的中堅の
働き手の視点から生き生きと描いたものである。(―中略―)
著者の主たる関心は漁師としての生活にあるが、パソコンに無関心であるわけは
なく、自らホームページを持ったり、同じく情報紙の電子化に関わったりする。
一つ屋根の下で亭主は身体性を発揮すべき漁師生活に生きがいを見いだし、妻子
は現実から遊離するようなサイバー空間に熱中している。この対比がいかにも
おかしい。
著者のホームページをのぞいてみたが、漁業生活にまつわるエッセー、地域の話題
から、モダニズムの詩人であった父親(岩本修蔵)の回想など、豊富なコンテンツ
で読ませる。
パソコンを買ったはいいが、ワープロや表計算だけで、その先のつきあい方が深ま
らないという人に、本書はよきヒントを与えてくれるだろう。(紀田順一郎)
(北海道新聞 2003年4月13日)
◆
房総半島の最西端、館山市西岬地区香(こうやつ)に移り住み、漁師と週刊誌記者
の二足のわらじ生活を送る著者のインターネット奮戦記。
インターネット目当てで、早々にパソコンを購入するもののプロバイダーにもつなげ
ず断念。代わってパソコンにハマっった妻・ヨーコの助けを借りながら始めた地域
新聞のWeb化や、花や海の幸のインターネット通販、そしてショッピングモールの
開設まで。漁師町の暮らしを描きながら、仲間と楽しむインターネットライフを活写。
(日刊ゲンダイ 2003年4月)
◆
(―前半略―)
最新作は漁師エッセイの流れを縦糸に、インターネットの世界を横糸に紡ぐ。
95年から始まったネットの世界の進化を、家族がネットに没頭するさまを時系列に
追った。念願の漁業権を取得、新造船「隼丸」を進水するくだりは感動ものだが、
時を同じくして妻と娘はサイバー空間の闇にひっぱられる。漁師暮らしと電脳の
世界の対比が、この本の読み所でもある。おなじみの香の住民「ノリ」「マサル」
「ヌマさん」なども登場する。インターネットの部分では「市役所のチカシ」の
ウェイトも大きい。
全18話のエッセイ集で、2000年をはさんで、岩本さんの世界も激変する。
インターネットの浸透、漁業権の取得、隼丸の進水、ショッピングモールの開設、
妻のHPのヒットなど。読むほどに「岩本ワールド」が広がる。
今回から装画挿絵画家も交代。刺網やチョコ網などの漁法も、イラストで詳しく
解説した。「漁法については特にこだわった」と岩本さん。(以下略)
(房日新聞 2003.3.15)
◆
IT革命の熱波は、ここ房総の漁師町までも席巻した。
忽ち夢中になった妻と漁師&文筆家の夫。HP作りや魚のネット直販。
確かに便利で面白いが、それに振り回される滑稽さ、ホロ苦さ。
対極に描かれる漁師暮らしのなんと愉しいことか。漁法のイラストも嬉しい。
(週刊新潮 2003.4.3)
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念願の漁業権を取得し、漁師生活に精を出すフリーライターの夫と、サイバー空間
にはまりこんだ妻。すわ、一家離散か!?
(週刊金曜日 2003.3.21)
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