■作品内容
ロバンジョ、サンカイ、ヤヘイ、と屋号で
呼び合う世界がある。
潮の香が漂い、ひとときの憩いに話が
弾む。
暮らしと自然が響きあい、季節の中で
ゆっくりと時間流れる。
海辺の暮らしに憧れて、房州の小さな
漁村を終の棲家とした著者の漁師町
物語。
【著者紹介】
1941年満州生まれ。東京大学文学部卒業。
TBS、テレビマンユニオンなどを経て、現在雑誌記者。
著書に「悲しい錯乱」「マンボウの刺身」「ゴンズイ三昧」などがある。
【書評から】
週の半分を東京で雑誌記者として過ごし、あとは千葉県館山近くの漁師街・香
で漁師になるという二重生活を送る著者のエッセイ集。
といって、昨今、流行の「田舎暮らし」「アウトドアライフ」(ああいやな言葉だ)
なんかとは年季の入り方も土地っとの付き合いも、ワケが違うのだ。
何しろ漁師を始めて二十六年。著者が香の浜を歩けば、仲間の漁師たちから
声がかかる。「おかずにイナダ持っていくかい」。遠慮しても駄目、
バケツ一杯のとれたての魚や時にはカツオ一本丸ごと分けてくれるのだ。
四季折々の出来事に彩られた、仲間たちとの濃密で愉快な暮し。
その中で著者は、カワハギ、マンボウ、ゴンズイ、マトウダイといった旨い魚を
味わい、初めての田んぼ作りに精を出し、果てはツチクジラの解体作業にも
参加する。(以下略)
(「週刊新潮」1998.5.28)
学生時代に泳ぎにいった千葉・房総半島の漁師街、館山市の香(こうやつ)の
海暮しに魅せられて、夏は漁師として働くフリーの週刊誌記者の「漁師物語」です。
あわただしい都会生活とは逆にゆっくりと時間の流れる海辺の町。そこで出会った
漁の名人、勤めを終えた定年漁師、民宿の主人などさまざまな人との交流、自然と
響き合うくらしの様相を描きます。手と足を使って働くことを通して「この世の
一員として在ることを実感した」といいます。
(赤旗1998.5.18)
四季はめぐり、旬の魚が揚がり、人はすこしずつ年を重ねる。東京で週刊誌記者、
千葉・館山で漁師という二重生活を続ける著者が、漁の体験や食の発見、集落の
人々との人間関係、遊び+飲み仲間たちのことなどを丹念に書いてきた「マンボウ
の刺身」「ゴンズイ三昧」に続く3冊目。マトウダイの刺し身、ハバノリ摘み、鯨の
解体などを加え、初めてトライした田んぼ作りの話も。
(東京新聞1998.6.11 中日新聞1998.6.12)
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