■作品内容
子どもに生命の大切さを教えるときに、
なぜ葉っぱや犬の話にたとえないと、
伝えられないのでしょうか?
幼児虐待・いじめ・差別・不登校・援助交際…
現代の子どもたちの目の前にある困難な問題に、子ども自身が立ち向かうこと、
自らに問いかけること、自ら答えを探すことを、文化人類学の成果から、やさしく
語りかけた画期的書。子どもから大人まで読める総ルビ付き。
《本書の目次から……全42項目の一部》
・赤ちゃんが可愛いのはなぜでしょう
・自分より大切なものって、なに?
・一人前ということ *1
・危うくて大切な境目のとき
・「生きている」ことと「死んだ」こと
・一人ぽっちは怖いですか
・家族、それは特別な人たち
・差別の心はどこから生まれるのでしょう
・男の人のスカート姿は、なぜ変なのでしょう?
・あいさつは窮屈ですね
・なぜこんなにも、してはならないことが多いのでしょう
・文字のもつ不思議な力
・言葉と文字との不思議な関係 *3
・ラフカディオ・ハーン、小泉八雲からの贈り物 *2
・援助交際をしてはならいというのは、なぜでしょう
・あなたと学校を一度点検してみませんか
*1) 2004年静岡県立清水南高校中等部の入試問題に出題されました。
*2) 2005年東京純心女子学園中等部の入試問題に出題されました。
*3) 2005年静岡県立浜松湖南高校の入試問題に出題されました。
【著者紹介】
1942年福岡県生まれ。九州大学大学院博士課程単位取得満期退学。
お茶の水女子大学教授。日本民族学会会長。専攻は文化人類学。
著書に「いのちの文化人類学」「ケガレの構造」「暮らしの中の文化人類学」など。
【書評から】
文化人類学者である著者が長年の研究成果を基に、「いのち」や「家族」や「きま
りごと」など、子どもたちが学ぶべき大切なことを八章四十二項目にまとめた。
子ども自身が気付き、考え、答えを見つけ出せるよう総ルビになっている。
現代の子どもたちを取り巻く環境は一見豊かに見えるものの、実は困難な問題で
あふれている。大人は子どもの悩みや苦しみに気付かず、子どもはそれをうまく
大人に伝える方法を持たない。そのような現代の大人と子どもの相互理解の一助
となる一冊。
(埼玉新聞2002.1.27)
◆
「ケガレ=不浄」説で知られ、現在は日本民族学会会長も務める文化人類学者が、
子どもの置かれた状況に衝撃を受けたのは、一九九七年、神戸の小学生連続殺傷
事件からだ。
事件を起こした少年についての報道を読み、植物状態だったという少年の祖母の
死に着目した。「死んでいるのと生きているのとどこが違うのか、親たちはきち
んと説明しなかったのではないか。少年は、その疑問から離れられず、確かめな
いと怖かったのだろう」
改めて子どもの世界に目をやると、テレビや絵本など色彩に満ちた情報があふれ
ているが、本質的な違いはあまりない。平板なモノクロームの世界だ。しかも、
大人の目の届かない空間がどんどん減って、息が詰まりそうだ。
世界の多様さを見せるなら文化人類学の出番だ。四年ほどかけて書きためた原稿
を、さらに物語仕立てに練り直した。初めて文字を覚えた喜び、独りぼっちの寂
しさを乗り越える姿…。描かれる子どもたちは、四十年近く国内外で取り組んで
きた現地調査で出会った人々がモデルだ。(後略)
(読売新聞・本よみうり堂、2002.2.10)
◆
大人はみな、かつて子どもだったのにいつからか子ども「世界」のことを忘れて
しまう。本書は、大人が子どもの「世界」を、子どもが大人の世界をどのように
見ているかを教えてくれる、架け橋のような一冊だ。(後略)
(「児童心理」3月号)
◆
(前半略)
子ども達と日々生活を共にする私は、「3章 自分というものの不思議さ」の中で
「一人ぽっちは怖いですか」「ブランコをこいで別の世界へ」を特に子ども達に読
んでほしいと思った。
思春期という自分探しの旅を、不思議な時間と思えたらどんなに楽しくなるだろう。
自分にとっての不思議な時間を自分の存在を確かめられる時にしたら、生きていく
エネルギーが湧いてくるのに!
本書に流れる長年の調査から得られた著者の問いかけは、小さな町や村で自然や
人との関わりの中で生きている日々の生活そのものが生きていく基盤であり、歴史
となることをあらためて考えされた。
そして、そのことを私達大人がどこかに置き忘れ、見失いかけている、と警告を
発ているのではないかとも感じられた。大人には、私達が存在する原点、歴史を
語り伝えていく役割があると!
(「英語教育」2002年6月号、塩田瑠美)
その他、「看護管理」Vol.12、教育医事新聞3.25など多数。
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