■作品内容
巨大証券は、なぜ破綻したのか? 5年前に「平成恐慌」の到来を予言した著者が、
山一破綻の深層と日本経済の将来を論じる。元・山一証券参与による、
痛恨の書き下ろし。
《本書の目次から…歴代社長列伝》
・法人営業のカリスマ………………………………大神一
・志の人……………………………………………小池国三
・知性の人…………………………………………杉野喜精
・波乱の勝負師………………………………………太田収
・堅実経営の人…………………………平岡伝章・木下茂
・中興の人………………………………………小池厚之助
・聞き上手の酒豪…………………………………日高輝
・「分かった、分かった」で分かっていない……植谷久三
・強引なバトン・タッチ……………………………横田良夫
・ペルソナの下で損失隠しへ……………………行平次雄
・何もしなかったクラウン・プリンス………………三木淳夫
・パンドラの箱を開けた人………………………野沢正平
【著者紹介】
1933年東京都生まれ。一橋大学社会学部卒業。
山一証券参与を経て現在、国際エコノミスト。
著書に「日本経済恐慌の予兆」など。
【書評から】
昨年十一月二十四日に突然、自主廃業を決めた山一證券については、破綻前後
の山一や行政当局、主取引銀行の動きを中心に、何冊かの「真相本」が出てい
る。社内の調査委員会の報告書も提出された。本書はこれらと一歩距離を置き、
創業時代までさかのぼって、会社が崩れていき様を描いている。
こうした本が書けるのは、著者がかつて山一の企画部に属し、社長のあいさつ
文を執筆するなど、トップに近いところで仕事をしていたからだ。定年退職後
も「山一証券百年史」の編さんに携わり、客観的に会社の盛衰を見てきたと
いう。
(中略)
著者はそれでも、山一の経営破たんは「八つもの無策と不運が重なって、まさに
針の穴を通るような可能性のもとで、現実のものとなった」と強調する。
企業が本書から引き出せる教訓は多い。特に経営陣の劣化をどう防ぐかは、多く
の日本企業にとって最大のテーマだと言っていい。
日経新聞1998.5.17)
◆
昨年十一月二十四日に山一證券が自主廃業を決定したとき、わたしはこの本を
書くことをきめた。
山一の経営破綻という世間を震撼させた事件も、一年もたてば歴史の片隅に追い
やられてしまうであろう。しかし、幾重にもかさなり合った歴代トップと政府の
無能・無策が、山一の従業員と株主に多大の苦痛と損失を与え、顧客をはじめと
する広く世間一般を深刻な不安に陥れた、この半世紀に一度の世界的金融事件を
風化させてはならない。
(中略)
わたしにとっても、夢中でこの本を書き上げて出版にこぎつけてみると、三十八
年間活動の「場」を与えてくれた山一證券は完全に消滅し、会社の友人や後輩達
も離散してしまっていた。
(東京新聞”自著を語る”1998.5.7)
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