■作品内容
ねこのように
ブルブルブルってできたら
とってもらくになれるのに
(木坂涼「17歳」)
漱石の「猫」って何種の猫なの? 朔太郎の「猫」はどうして青いんだろう?
日本文学の名作・詩に登場するネコを暗闇の中からじっと見つめる詩人の
眼光は鋭い。ネコ好き書斎派人間へ贈る、読みごたえたっぷりの辛口猫論。
《本書にとりあげられた傑作猫詩》
・「青猫」「猫」「愛憐」萩原朔太郎
・「猫に代わって」「猫と会う場所」諏訪優
・「冬猫記」「猫たち」北村太郎
・「猫とふたり」平田好輝
・「猫と桃」飯島耕一
・「私の犯罪百科辞典」寺山修司
・「月猫」土肥あき子
・「ネコ・ネコ・ネコ、そしてネコ」岩瀬啓子
・「猫」堀口大學
・「そこにねこのいる暮し」直井和夫
・「ネコの家人」伊藤比呂美
・「全身的」宮下和子
・「猫がぺちゃんこ」長嶋南子
・「猫の歌」長谷川四郎
・「液(カイロの猫)」田村隆一
・「猫的人生」井坂洋子
・「17歳」木坂涼
・「時間の王様は猫」中上哲夫
・「猫を被る」関富士子
・「真昼の決闘」藤富保男
【著者紹介】
1938年東京都生まれ。京都大学文学部哲学科卒業。
詩人、評論家、DJ。75年詩集「水甕座の水」でH氏賞受賞。
美術・映画など幅広い分野で著述活動。「緑の小函」等著書多数。
【書評から】
猫と孫の詩にロクなものはない、と著者は言う。猫の詩のアンソロジーを
まとめようと思い立ち、手当たり次第に「猫詩」を集めた三年間。結局、
著者が思い知らされたのは、「猫詩」のほとんどが孫の詩同様、「猫可愛
がり」な愚作ばかりだという事実だった。
そんな著者が冷徹な目で選んだ、例外的な「猫詩」の名作を紹介したのが、
巻頭の「青い猫からただの猫まで」というエッセー。萩原朔太郎の「青猫」
に始まり、飯島耕一の「猫と桃」に至る傑作選は、猫好きならずとも存分
に楽しめるおすすめ品ばかり。(以下略)
(産経新聞1998.3.23)
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かろうじてお眼鏡にかなった傑作は萩原朔太郎「青猫」など二十篇。どうして
こんな情けないことになったのか。「理由は『猫可愛がり』だけの詩で現代詩
の命の批判性がないため」と一刀両断している。
猫詩アンソロジーの初期の構想はとん挫し、小説などに書かれた猫も登場する
仕儀となった。そこで夏目漱石の名前のない猫、内田百フのノラ、村松友視の
アブサンなど毛色の変わった猫がはいかいする。(以下略)
(朝日新聞「著者に会いたい」1998.4.12)
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