■作品内容
葬儀が家で行なわれなくなり、ゲームの世界では簡単にリセット
されるいのち。
皮肉なことに、現代は、いのちの軽い時代です。
「いのちとはなにか?」という根源的な問いを暮しの中の具体的
な事例を元に、正面からやさしく問いかける「考えるえほん」
(本書のもくじより)
@ペットが教えてくれるもの
Aいのちはあなただけのものではありません
B「生きている」ことと「死んだ」こと
C私が死んだら世界はどうなるのでしょう
D生きることを豊かにしてくれる二つの時間
【著者紹介】
文・波平恵美子
1942年福岡県生まれ。九州大学大学院博士課程単位取得満期退学。
お茶の水女子大学名誉教授。前・日本民族学会会長。「ケガレ=不浄」論や医療
人類学など、多方面で活躍中の日本を代表する文化人類学者。
著書に「いのちの文化人類学」「ケガレの構造」「暮らしの中の文化人類学」など。
絵・塚本やすし
1965年東京生まれ。イラストレータ・デザイナー・装丁家。
主な共著に「ふたり おなじ星のうえで」(文・谷川俊太郎)「夏の洞窟」(文・荒川
じんぺい)「保健室にいたらだめなの?」(文・こんのひとみ)など。
【書評から】
「命とは」の問い 生きていく力に
自分が死んだら世界はどうなる? 命って何? 人は思春期に、そうした根源的
な問題に初めて立ち向かう。それが「生きる力」になると、お茶の水女子大名誉
教授で文化人類学者の波平恵美子さんが、考えるヒントを少年少女に提供する
エッセーシリーズの刊行を始めた。(中略)
◎
波平さんによると、昔は人間が精神的に安定して人生をまっとうするのに役立つ儀
式や言葉などがあったが、受け継がれなくなってきた。そこで、自分の体験や研究
成果を基に、子どもに分かりやすく伝えたいと考えたという。
「身近に命の尊さを学べる一場面」として、シリーズ第一巻「いのちってなんだろ
う」で取り上げたのは、ペットの死だ。
飼い主が帰宅すると、犬はしっぽを振って飛び跳ねながら走り寄ってくる。「何が
こんなにうれしいのだろうか」。波平さんはまず、考える入り口を示す。
その上で、東京・渋谷駅で銅像になっている忠犬ハチ公のエピソードなどを紹介し、
ペットの寿命が人間よりも短いことを説明。私たちは「ペットを飼う喜びと死なれる
悲しみを通して『いのち』というものの素晴らしさを味わっているのかもしれません」
「ペットの一生をそっくり見ることを通して『いのち』について考えることができる」
と書いている。(以下略)
(信濃毎日新聞 2007.12.3/共同通信社配信)
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文化人類学の研究から、さまざまな価値観や考え方があることを知ってほしい、
生きる知恵のすばらしさ、この世に生まれ生きることのすばらしさと不思議さを
子どもにも感じてほしい、視野を広げてほしい、元気に生きてほしい、という著者の
思いが伝わります。
塚本氏の絵と波平氏の文が全ページで共鳴し合っているので、絵も文も楽しみつつ
読むことができます。子どもが行き詰ったり悩んだりしているときに手にとれるよう
子どもの近くに置いてほしい本です、もちろん、親子や教室のみんなで読むのも
おすすめです。(メルマガ『教育と医学』2007年12月27日)
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