■作品内容
田中角栄は本当に巨悪だったのか!?
番記者として長年身近で見続けた著者が
真の姿を問い直す。
戦後政治の結晶として、「総中流社会」をもたらし、ロッキード疑獄で追われ、
悲憤のうちに逝った田中角栄。角栄政治とはなんだったのか?
混迷の現代に角栄あれば、と今も人気が高い稀代の政治家の栄光と挫折の生涯を
長年、番記者として身近に見続けてきた著者が問い直す。
番記者ならではの秘話満載。渾身の書き下ろし。
*この秋、政治家・田中角栄の再評価が始まる!
「もくじ」から (一部抜粋)
第1章 貧しい生い立ち
第2章 疾風怒濤の上京時代
第4章 番記者と田中角栄
第5章 政界進出、闇の政治資金
第6章 列島改造への熱き思い
第10章 天国から地獄へ
第11章 心耳を澄まして
第12章 多情多恨
第13章 ロッキード事件は対日謀略か
第14章 闇将軍と呼ばれて
終 章 生き続ける「英雄伝説」
【著者紹介】
増山榮太郎(ますやま・えいたろう)
1930年生まれ。早稲田大学文学部卒業。時事通信社入社後、政治記者として
岸信介、佐藤栄作、田中角栄の番記者を務める。その後、ブリュッセル支局長、
パリ支局長、ニューヨーク総局長などを歴任。
現在、政治評論家として活躍するかたわら、シルクロード探訪家として、カルチャー
センターなどで講座を受け持っている。
主な著書に、『よみがえるアメリカ』(時事通信社)、『シルクロードお遍路の旅』
(出窓社)等がある。
◎著者のウェブサイト: <「新・増さんの政治教室」
【書評から】
(前半部略)
田中政治は、現在の小泉政権と比較してどうであろうか。これが、本書の
テーマである。
田中が唱えた「日本列島改造論」は、「国土の均衡ある発展」を名目に、
表日本の富を貧しい裏日本へ移すことであった。これを全国規模に拡大し、
すべての国民に総中流、平等社会をもたらしたのだった。
ところで今や、小泉政権の提唱するグローバリゼーションが惨憺たる荒野を
現出させ、その「負」の部分がようやく見えてきているが、それと対極にある
「列島改造論」の世界も一度検討すべきである、と本書は結んでいる。(YK)
(「週刊東洋経済」2006.1.28)
◆
身近な番記者、生々しく記録
車に同乗した記者に、田中角栄がいきなり、「解散だ」という場面が出て
くる。びっくりして声も出なかった記者が若き日の著者。
派閥の領袖を追う記者を番記者と呼ぶ。臨場感に富む記述が多いのは、
著者が二十年あまりも田中番記者を務めたから。
良くも悪くも天才と評された政治家の評伝。本人に会ったこともない人が
書いた角栄本に違和感を抱いていたという著者は「あとがき」で、身近に接した
番記者として記録を残しておきたかったと執筆の動機を語る。
(共同通信社配信 / 秋田魁新聞・2005.12.18 / 山陽新聞・2005.12.18 /
岩手新聞・2005.12.17 / 宮崎日日新聞・2005.12.18)
◆
番記者の目で角栄像に新たな光
(前半略)
本書は鮮烈なシーンで始まる。昭和35年(1960年)日米安全保障条約の批准を
めぐり世情不安の時代、日比谷公会堂での演説会の壇上で、社会党委員長・
浅沼稲次郎が17歳の山口二矢の凶刃に倒れる。これを著者は面前で見た。
「政治の時代」は<あっけなく幕が下ろされ、「経済の時代」へと舵が切られた
のである。
翌36年7月、田中は自民党政調会長に就く。時に43歳。初対面の田中の言葉に
驚く。
「なんで日本列島には表日本と裏日本があるんだ。新潟県人は年の三分の一は雪
に閉じ込められる。関東平野には太陽が燦燦と輝く。これを不公平と言わずとして」
「チョビ髭を生やし、いかにも土建屋上がりといった風采。機嫌がよいと話の途中
で浪花節をうなる」田中の、「何も隠そうとしない陽気さ」に魅力を感じる。
(中略)
著者は田中の魅力を描きながら、「巨悪」として語られる田中政治に対する歴史的
評価を自問する。そして、気付く。田中が実現させたのは「国民総中流意識」を持っ
た平等社会ではなかったか。
先の衆院選圧勝を背景に小泉純一郎首相が声高に叫ぶ「改革」とは、グローバリゼ
ーションの名の下の「規制の少ない自由な市場型経済体制」である。「それは能力主
義のアメリカ型社会の導入であり、結果的には貧富の格差社会をもたらす」と著者。
庶民の願望とは逆のベクトルだ。だからこそ「角栄伝説」が光彩を放つ。
「迎合する庶民を、一方で遠ざける」本書は、そんな冷たさを秘めている小泉流政治
に警鐘を鳴らしている。 (小田敏三・新潟日報社編集局次長)
(新潟日報・2005.12.19 / 世界週報・2005.12.6)
◆
「コンピューター付きブルドーザー」「今太閤」と親しまれた反面、「闇将軍」
とも恐れられた田中角栄の栄光と挫折を、元番記者が詳細に綴った書き下ろし。
天才政治家、田中角栄を再検討、再評価する一冊。
(「週刊現代」2005.11.19号)
◆
「一億総中流社会」を実現したが、ロッキード疑惑に追われ、悲憤のうちに逝った
田中角栄。その栄光と挫折の生涯を、番記者として身近に見続けた著者が
問い直す。
(読売新聞・夕刊・2005.11.15)
◆
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