■作品内容
200余国からの移民が、マルチカルチャリズムのもと、独自の文化を築く国
オーストラリア。
ポーランド人の夫と共に移住生活12年の著者が、住む、働く、学ぶ、食べる
といった生活者の視点から、鮮やかに掴みとったオーストラリアの実像と
心地よい暮らし。
【著者紹介】
1956年東京都生まれ。上智大学外国語学部ロシア語学科卒業。
ワルシャワ大学大学院留学。マッコーリー大学経営大学院修了。シドニー在住。
著書に「ワルシャワに市民の歌声が聞こえる」など。
【書評から】
夫の国ポーランドから家族で移住して十二年なる女性が、多文化社会の面白さを
つづる。著者が初めて会ったオーストラリア人である在ワルシャワ領事が「モハ
メド・アリ」という名前だったというエピソードが象徴的。世界各地からの移住
者のために国営ラジオ局が番組で使う言語は六十八にのぼり、学校でも多言語教
育が盛ん。その一方で、「オーストラリア化」した子供と親世代との間で家庭内
文化ギャップび悩む例もある。
(朝日新聞2000.9.10)
この本を読むと自分が「日本」という枠にはまっていることを痛感する。著者は、
自分が体験したオーストラリアの生活をそのまま描くことによって、多民族国家
であるオーストラリアでどのように暮らし、人々と付き合い、どのような文化を<
持つかなどを指南してくれている。日本とオーストラリアを比較して日本はだめ
だとか、オーストラリアはこんなに素晴らしいなどとは言っていない。よって、
オーストラリアに長期滞在する人にとっては貴重な情報ばかりである。
(中略)
「外国人にとっては特定の民族を基盤にした社会での生活は結構大変なことでも
ある。その国に強く根づいた風習や習慣に慣れなければならないし、ましてや
その国に住む外国人が、社会から百パーセント受入れられるようになるのも難儀
である。」という著者の言葉は、ポーランドに六年間住んでいた経験から出てき
たのだろう。しかし、著者はすっかりオージーとしての視点を獲得している。
オーストラリアという多民族国家が創り出す新たな文化を知るには最良の書であ
る。
(図書新聞2000.11.25・松下奈津美)
◆
外国滞在記は子供のいる主婦の書いたものが一番面白いとは昔からの定説。
本書もその例に漏れず極上の面白さが保証される。
ワルシャワ大学に留学してポーランド人の夫と結婚した著者は、88年に一家3人で
移住。家の事から始まって息子の小学校、近所付き合い、仕事に遊び、階級なき
社会で成功者より失敗した人に同情の集まるオージーたちの明るさなど、普段着の
オーストラリアがタップリ読める。マルチカルチャリズムの実態が生き生きと伝わる
コンパクトな名著だ。
(日刊ゲンダイ2000.9)
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