■作品内容
東西冷戦後の世界は、民族や宗教をめぐる紛争の時代
だという。
特に西欧社会では、21世紀の敵はイスラムだという声
が高まってきた。
そのヨーロッパで暮らすイスラム移民は、異文化の中
でどのように生きているのだろうか?
ベルリン〜アムステルダム〜パリ〜イスタンブル…。文明の十字路に生きる
人々の実像を確かめるため、学生達は研究室を飛び出した。
【著者紹介】
1956年東京都生まれ。東京大学大学院理学系研究科地理学専門課程中退。
一橋大学大学院社会学研究科教授。
著書に「パパの国日本』、「父親の国トルコ」ほかがある。
【書評から】
これは、フィクションではない。一橋大学内藤ゼミの先生と学生さんが、
トルコ移民について学ぶために、ベルリン、アムステルダム、パリ、トル
コのアンカラとイスタンブールを、25日間にわたって訪れた旅の記録であ
る。単なる旅行ではない。何ヶ月にも及ぶ入念な準備のもと、大学の研究
室がそっくり空を飛んだのだ。
彼らのテーマは、地球規模の課題の一つである多民族・多文化共生の問題
を考えることで、特にヨーロッパにおけるトルコが題材である。異質な文
化の間に摩擦が生じる。それを日常生活の目線でとらえ、老後問題、音楽
や食べ物など身近なテーマに即し、論文ではないところにこの本の特色が
ある。学生たちはトルコ語を学び、インターネットやBBC、CNNで生
の情報を仕入れ、現地の人と事前に連絡をとってアンケートを用意し、現
地へ飛んでインタビューを行った。文章や挿絵、写真のあちこちに、学問
が息づき、若い真摯な問題意識が目を輝かせる様子があふれている。これ
は画期的試みである。(以下略)(中山智香子)
(熊本日日新聞1999.9.5)
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